逃げる女

悪夢

翌朝、家の電話が鳴り響き目を覚ました。



布団から出ている顔は汗をかいていて、ひやっとする。



寒い部屋でも布団の中は暖かい。


それなのに私は震えていた。



まただ。
あの時の夢を見ていた。



夢の中で私を蔑む大きな笑い声が、また聞こえてくるような感覚に襲われる。




4年も経てば、忘れてもいいものなのに。


どうして私はいつまでもあの時の事を引きずってしまうのか。



電話が留守電に切り替わりほぼ毎日聞いている声が聞こえて来る。



店長だ。



私は震えた体を起こして、電話へ手をかけた。



「もしもし、ごめんなさい寝てました。」




『寝てる所、悪い。高橋に続いて由美もインフルエンザでダウンしたらしい。今日の夜、代わりに出れないか?』



「わかりました。」



店長は何度もすまないと繰り返して電話をきった。




.
< 83 / 197 >

この作品をシェア

pagetop