逃げる女
しばらくして、杉田さんにバイトの岡島君、午後出勤の人達が続々とやってきた。



そして開店。みな、それぞれ、ナプキンの補充やら、グラス拭きなどしながらお客さんを待つ。



『嘉島。』


杉田さんに呼ばれて近づくと、周りに聞こえない位の小さな声で、


『6日開けといて。』


それだけ言ってすぐに離れた杉田さん。


雪祭り。
私の予想通りの日にちだった。


周りに秘密で交わした約束に少しドキドキしながら、洗い終えた食器を拭く。




『いらっしゃいませ。』


ホールから声が聞こえた。

お客さんが来たんだ。
少し騒がしくなる店内。


まだ他にお客がいないせいもあってか、大きな声で、


『結構良さそうな店じゃん!お前、誰とこういう店にきてるんだよ!?』


『俺も初めてだよ。友達に勧められてたんだ。』


『なんだよ。だっせーな。嘘でも女と来たとか言えよ。』


どっと起こる笑い声。


私は今朝見た夢を思い出す。
それくらい似た笑い声に少しだけ、気分が悪くなる。


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