逃げる女
ホールから顔を出した、杉田さんが私に駆け寄った。



『おいっ!!真っ青だぞ!?』




後ろからまた、笑い声が聞こえる。




沸き上がる嫌悪感。この4年間必死に忘れようとした声。



夢で聞いた声とシンクロする。



『嘉島っ!?』



込み上げる吐き気を我慢しきれず、私は杉田さんを押しのけトイレへと走った。








「うえぇっ…げほっ…ハァ…ッ」



先ほど飲んだココアの色をした吐瀉物が便器の中に拡がる。



その色に、また嘔吐してしまう。



一度流して、立ち上がろうとするが、膝が震えてままならない。




「うっ…おぇっ…げほっ」



何も食べていない私は吐く物が何もないのに、吐き気が治まらない。



唾液と胃液が出て来て、止まらない。
苦しくて、涙も出てきてしまう。



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