逃げる女
『大丈夫か!!』



追い掛けてきた杉田さん。



トイレを抱え込むように吐き続ける私の背中を摩ってくれる。




しばらくずっと摩ってくれるその手に安心したのか、徐々に吐き気も治まってた。




『…立てるか?』



「はい…」


壁に手をかけ立ち上がろうとする私の腕を支えてくれる。




ふらつく私を見て、杉田さんは肩を貸してくれた。



トイレから出ようとした時、誰かがトイレへ入ってきた。




顔を上げた私を凝視する人物。




ドクンっ



ドクンっ






『すみません今どけますから。』



杉田さんが私を庇いながら狭いトイレ内で、道を作ろうとする。



トイレへはもう、すんなり進めるくらいの余裕があるはずなのに、その人物は、中へ入ろうとせず、入り口を塞ぐように立ったまま私をずっと見つめる。




耐え切れずに目を反らした私に、その人物はゆっくりと口を開いた。




『嘉島…か?』





なぜ?




どうして?





なぜ今になって私の前に現れるの?





森田君…



.
< 92 / 197 >

この作品をシェア

pagetop