逃げる女
何も言わない私にまた問い掛ける森田君。



『嘉島…なんだな?』



俯いてても、杉田さんも私を見ているのがわかった。


「ち…がい…ます。」


搾り出すようにやっと答えた私に最初に反応してくれたのは杉田さんだった。


『申し訳ありませんが、少し避けてもらえますか?この者は少し気分が悪いようで、休ませたいのです。』



道を譲った森田君の横を通り過ぎようとした瞬間。


『俺は間違えない。嘉島なんだろ?』




「―ッ!!」



『大変失礼致しました。ではごゆっくり…』





杉田さんに連れられて私は更衣室へと連れてかれた。





更衣室に置かれた小さな丸椅子に座らされる。



『横になれる場所がないからな…平気か?』



「すみませ…ん…」




『少し休んでろ。今はまだ店も忙しくない。気にするな。』




そして、1人になりたいとわかってくれてるのか、私を更衣室へ残し仕事へ戻った。




.
< 93 / 197 >

この作品をシェア

pagetop