逃げる女
それから1時間半後、店長が彼等が帰ったと伝えてくれるまでの間、ひたすら更衣室に篭り続けた。


恐る恐るホールへ戻ると、店内には2組のお客さんしかいなく、忙しくなかった事に安堵する。



『嘉島さん大丈夫っすか?体調悪いって聞きましたけど…まだ少し顔色悪いっすね。』


岡島君に言われて、出てくる前に鏡くらい見てくれば良かったと後悔する。


「平気。ごめんね。忙しくなかった?この料理、私が運ぶわね。」



『いいっすよ!俺が行くんで!嘉島さんは、レジんところで、お客待ちでもして休んでて下さい。』




ここで働いてる人達は皆、優しくて泣きそうになる。


「ありがとう。そうさせてもらうね。」



レジに入ると、普段は置いていない、折りたたみ式の長い足の椅子が用意されていて、店内を振り返り見ると岡島君が、キッチンを指指して笑っていた。



私の為に店長が用意しておいてくれたんだとわかると堪え切れずに涙が零れた。



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