逃げる女

過去

『あれ?嘉島…まだ帰ってなかったの??』



放課後の教室。薄暗くなって来た教室に1人残り、図書室から借りて来た本を読んでいた私に、声をかけてきたのが森田君だった。


『何読んでるの?』



そうして近づいて来る森田君。私は突然の事にどう対応すればいいのか困っていた。



当時の私は、誰の目から見ても太っている部類に属してて、極端に地味だった。友達はいるけれど皆女の子ばかり。
大人しい部類の人達と物静かに会話をするくらいで、男子に用事がある以外話しかけられた事なんてあるわけもない。



近づいてくる森田君に、ドキドキしながら、読んでいた本のタイトルを告げる。



『それ!俺も読んだ事あるよ!図書室で借りた事あるんだ。』



「私もさっき借りてきて、読んでたの。」





『そうなんだ。でもなんで教室?図書室の方が暖かいし、明るいのに。』



「みんな、残って受験勉強してたから…そんな中で本なんて読んでたら、嫌味みたいでしょ?」




『ははっ。そっか。…嘉島は?進学だったよな?』



「うん。北海道の大学に推薦でね。」



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