双子×双子
「だから様子見るって言ったんじゃないですか〜。水無の本心…知りたかったから…」


「弟。悠祐とくっついて欲しいと思っているのか?」


矛盾した回答に即座に切り返す。すると無理に作った笑顔が恭祐に向けられた。恭祐は作り笑顔から段々といたずらっ子のような無邪気な顔になっていく神無の顔を見ていた。


「さぁ…どうでしょう。それもありかもですね〜。それと『弟』じゃなくて神無です♪神無ってちゃんと名前で呼んでください。あ!そーだ♪言っちゃいますけど〜僕〜実は、恭祐先輩のこと気になってたんです♪」


「ぁん?どうい…ぅんっ!!」


いきなり頭がガクンと下がった。神無の腕が恭祐首に絡まり唇が重なった。


「んんっ!ん゛っ!…んーっ…っ…」


頑なな恭祐の唇を割くように神無の舌が入る。恭祐は口への抵抗に併せ腕にも力を入れ、必死に逃れようとする。するとその時足音が聞こえてきた。その音を聞き恭祐は必死に神無の絡みついた腕を解こうと更に力を出す。だがそう簡単に解けるはずもなく虚しい抵抗に終わった。そして足音が止まり恭祐は横目でその姿を見た。そこには硬直した水無と若干ながらも驚いた表情をした悠祐が手を繋いで立っていた。


「神無…?何…してるの…?」


「恭ちゃん…何で…」


「んっ…ンはっ…はぁっはぁっ…」


ふらつきながらも足を踏みとどめ唇を拭いながら背筋だけを伸ばした。そしてちらと悠祐の目を見て直ぐに逸らす。そして焦りが滲んだ顔から嘲笑うような顔つきへ変えた。


「そいつが次の相手か?フッ…良かったじゃねぇか。俺より相手んなりそうでなによりだ。そいつを手中に収めんだろ?…干渉はしねぇ。俺には『関係ねぇ』からな。好きにしろよ。」


「ちょっと!」


恭祐の声質が変わった。いつもより高く軽い声。神無は恭祐がそんな事を言うとは思いもしなかった。仲のいいと有名な兄弟だからどちらか片方が一方的に言うことなどないと。恭祐の言葉は自分がしていた事と矛盾を感じさせた。他にもこの際だと言ってしまう事があるかもしれないとそれ以上言わせないよう口を挟んだ。

恭祐のいつも一言一句大切にする話し方がこの時どこかへ消え、別の誰かに取り付かれたようなそんな言い方だった。


「マズい…この喋り方は…!」



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