双子×双子
悠祐はこの時気づく。恭祐が怒りを露わにしていると。こんな話し方をする事は極めて稀だ。自分に苛立っているか誰かに対して怒りを感じているか。どちらかしかそういう事はない。それを知っている悠祐だから危険を察知した。だが今はどちらも混ざっているようだと見て取れた。
恭祐は左にいる相手を見下ろし口角をニッと上げた。


「なんだ神無。今なら相手してやんぞ。」


「恭ちゃん!違うんだ!誤解だよ!」


悠祐は咄嗟に駆け寄ろうとしたが気づいたときには既に遅かった。


「恭祐先輩?…ん!んんっ!…っ…はぁっ…んっ…んっ…ん…はぁっ…あっ…」


神無は違和感を覚えて覗き込むように見上げた。すると恭祐から神無へ激しいキスが与えられた。予想もしない快感に神無の膝はガクンと崩れ落ちそれと同時に恭祐は神無の腰を抱き寄せるように支えた。そしてお姫様抱っこをして出口へと歩き始めた。


「恭ちゃん…ごめんっ!…俺には恭ちゃんしかいないよ!だから許して!…ね?」


出口へ向かう2人を追いながら悠祐は弁解を求める。当然手を繋いだままなのだから水無も付いてきていた。その水無を歩きながらも強引に引いて恭祐について行く。自動ドアを潜った所で更にスピードを上げどこかへ向かおうとする2人に追いつく。


「ねぇ、恭ちゃん!お願いだよ、聞いて!ねぇってば!ねぇ!」


するとやっと恭祐はピタリと足を止めた。そして神無を腕から下ろし、丁寧に足を地へ付けてやる。神無が自分の足で立ったのを確認すると悠祐に向き直った。


「誤解?何が。さっきの見て誤解なんての誰が分かる?…まぁ末永くお幸せに。俺は帰る。」


未だ繋いでいる手をちらりと見てから神無の手を引き、それだけ言い残すと悠祐を横切り帰路へ立った。


「キスしてたくせにー!」


さっきより少し遠くなった背中に叫ぶ。


「ぁん?」


ピタッと足を止め後ろへ意識を向け目を動かす。悠祐は恭祐に追いつくと負けじと続ける。


「恭ちゃんだってそいつとキスしてたじゃん!」


「だから?」


「だから!…うーんと…人の事言えないって言ってんの!」


冷めた声音と焦燥感の見える声音がぶつかる。なんとおかしな光景だろう。同じ顔した双子が向き合っている。背の高い方は獲物を狙っているような目つきと眉が下がり焦りも滲んでいたがそれより気持ちが勝ち挑むような目つきをしていた。
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