双子×双子
一方小さい方は2人とも困ったという声が聞こえそうな顔で向かい合っていた。


「人の事言えない…か…じゃあそういうお前はどうなんだ。」


「えっ?」


冷たい目が疑問の目を射抜く。


「俺を何だと思ってる。お前の双子の兄弟であって兄だ。俺が気づいてないとでも思ってるのか。お前の考えてる事なんてお見通しだ。」


「な…何の事?」


悠祐の焦り方が変わった。その証拠に目が泳いでいる。人間ならよくある特徴。嘘や隠したいことがあれば目が泳ぐ。それを見た恭祐はその隙をつつく。


「何?言わせるの?それとも、白を切るつもり?どっちにしろお前には不利だろ。当たっちまうからなぁ。」


「ねぇ恭ちゃんおかしいよ。落ち着いて、ね?」

少しでも話題を逸らし機会を伺おうと考えている悠祐に対し、恭祐は自分の身を挺する隙を与えないよう脳をフル回転させ逃れる術を常に考えようとする。


「落ち着いてる。」


「落ち着いてない!」


2人は同じ事を幾度か続けた。両方が譲らずいがみ合っている。だが疲れを覚えキリがないと判断した恭祐が次に言葉を出そうとした瞬間口を紡ぎ大きく息を吐く。


「はぁ。いい加減にしろ。俺はいつでも至って冷静だ。」


戦う意志を捨てず冷たい目で悠祐を睨みつける。


「今の恭ちゃんは冷静じゃないもん。自分の思いに従って身体が勝手に動いてるだけじゃんか。」


その目に対抗するように真剣な眼差しは冷たい目から離れない。


「それはお前の勘違いだ。」


「恭ちゃん!」


片方の目がそれ挑んでいた目は諦めを帯びた。目と共に肩から力が抜けたのが分かった。諦めの中に怒りも含まれ汐留兄弟は互いに目を合わせ黙って見ているしかなかった。


「もう、勝手にしろ。」


「恭ちゃん!!」


恭祐は身体の向きを変えていた。さっきより声を荒げて呼び止めようとする悠祐に苛立ちは増していく。そして自分までも声を荒げ反論する。


「勝手にしろって言ってんだろ!!俺には関係ねぇ!!…行くぞ。」


言い切った瞬間ハッと我に返った。その一瞬で頭が冷え元の冷静な自分を取り戻す。そして神無の手を強引に引いて歩き出す。予期もしない行動に身体が強張っている状態で引かれ衝撃が走る。


「え?!…ちょっと…」


それを見かねた悠祐も苛立ちを覚え舌打ちをした。だが水無の存在にふと気づき心とはまるで別な明るい声をかける。

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