双子×双子
「チッ。…ごめん水無くん。この埋め合わせはまたするから。」


「あ…はい…?」


ぎこちなく返した水無の返事を肯定と判断しそのまま走り出した。そして恭祐の腕を引く。


「恭ちゃん。ちょっと来て。」


「!!…っ…やめろ。離せ。…っくそっ…」


恭祐は足を踏ん張ってみるも勝てず無理矢理引き離そうとしても力が及ばずズルズルと引きずられていく。無理だと思うのは案外に早くすぐに別の事へと頭を巡らせた。そして引き合いながらふと後ろを見た。すると小さい男の子が2人、ぽつんと立っていた。恭祐は一番手前にいてそしてさっき自分が手を引いていた相手に手招きをした。すると男の子は自分を指差し問うような素振りを見せ、恭祐がそれに頷くとその疑問符を浮かべたまま走ってきた。そしてそのままその男の子の腕を掴んだ。悠祐の引っ張る速度は恭祐が引いていることもありそれほど早いわけでもなく、人が並みに歩く速度よりも遅かったため呼ばれた男の子──神無はすぐに追いつけ、そして並んで歩く事ができた。その腕を恭祐は引いた。神無は掴まれた瞬間驚いた表情を見せたが引かれるままについて行った。もちろん水無は1人取り残されるわけにもいかず神無の後を追ってきた。それをいいことに恭祐は悠祐へ話しかける。


「おい。いい加減離せ。…後ろ、見てみろ。」


「後ろ?…え、なんで…」

振り向けば2人手を引いたはずのない男の子がいた。いつの間にか、手を引かれた神無も水無の手を掴んでいたのだ。水無にすればさっきまたねと言ったばっかりだった。悠祐は当然驚いた。その証拠に足が止まり目が軽く見開いているのが分かった。恭祐はその表情を見ると口角を片方上げた。


「俺が何も考えてないと?」


悠祐はふーんと言いながら恭祐と双子ちゃんを見比べその瞬間勝ち誇ったかのような余裕の表情を見せた。


「ねぇ、水無くん、神無くん。恭ちゃんのエローい姿見たいー?」


「えっ?」


当然双子は声を揃えつつ驚く。一瞬何を言われたか理解できないといった顔をしていたが分かった途端に驚いた顔へと変えた。悠祐の魂胆を言わずとしれた恭祐は思わず声を荒げた。


「な゛っ悠祐っお前まさか!」


「見たい?」


そんな恭祐をよそに悠祐は2人に再び尋ねる。


「やめろ。頼むから。やめてくれ。」


声に力を無くした恭祐が必死に訴える。


< 29 / 47 >

この作品をシェア

pagetop