双子×双子
自分達の部屋の近くに来た頃、憂鬱な顔した1人と呑気な笑顔を浮かべている1人が肩を並べて廊下を歩き部屋のドアをくぐった。そしてそのドアを閉めた瞬間意を決したように水無は静かに口を開く。


「ねぇ、神無。」


「ん?」


名を呼ばれ振り向くと俯いた兄が見えた。その時は照れ隠しかと思った。


「僕の事、好き?」


「好きだよ?」


全ての言葉を待つ前に勢いよく顔を上げた。その顔は照れてなどいなかった。鋭いが戸惑いと遺憾の混じっているような目で神無を見ていた。そして次の質問を投げかける。


「じゃあ恭祐先輩は?」


「好きだよ。」


同じような口調で思いの変化も感じられない。水無は問い詰めるように次の質問をする。


「じゃあ僕と恭祐先輩の好きはどう違う?」


「えっと──…って…水無…?どうしたの?変だよ、水…っ!」


答えを待つ前に水無は俯いた。神無はいつもと違う雰囲気を察し顔を覗き込む。するとさっきとは違う覚悟を決めたような鋭い眼力でキッと顔を上げ、神無の腕を取ったかと思うと壁へ押し付けた。壁が大きな音を立てる。その衝撃で神無は軽く咳き込む。それも気にせず頭に血の上った水無は吠える。


「…っ!!うっ!…ぇほっ…こほっ…」


「ねぇ、答えてよ!僕だって分かるんだ。神無が恭祐先輩を恋愛感情で見てる事ぐらい!」


「水無っ!痛いっ!」


ギッと神無の手首にはどんどん力が込められていく。すると悲しいような怒っているかのような目が神無を射抜く。神無は驚きを隠せないでいた。それと共に腕にも痛みが襲ってくる。


「神無が悪いんだよ?色目使って先輩を落とそうとしちゃってさ。」


「水無っ!おかしいよ?ねぇ。」


「うるさい!」


声をかけるとまた鋭い眼力に戻った水無が再び壁へ叩きつける。


「──っ!…このっ!」


負けまいと神無は腕に力を込めそのまま押すと力ずくでベッドへ放った。


「!!…うっ!…ったぃ…。何すんだ!…?!いっ!…っ!やっ…やめっ…神無!」


神無は水無の両腕を掴み一つに纏めて片手で押さえ込む。2人はほぼ同格な握力をしている。だが上から押さえ込まれたために神無の通常の力に併せ体重も腕へかかる。仰向けの水無は力が思うように入らず抵抗してみるも効果はなかった。優位に立った神無はもう片方の手をシャツの中へ潜らせる。


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