双子×双子
「何?答えられないの?分かるんでしょ。自分なんだから。」


水無の表情が変わる。さっきとは打って変わって水無の顔つきは鋭く、だが怒ってはおらず、神無は眉間に微かにしわを寄せ眉が垂れ下がっている表情だ。そして視線も彷徨っている。2人の表情は言葉にも表れていた。


「僕は…。」


「迷ってるんだ。…僕は神無をどれくらい好きか言えるよ。誰にも渡したくない、たった1人の存在。ずっと側にいて欲しい存在。誰にも負けないくらい好きだよ。僕は神無しか好きになれない。自分で分かってる。…分かるんだ。本当の僕の気持ちだから。」


「水無…。」


ゆっくりと神無の手から力が抜けていく。そして解放した手で水無の頬に流れたままの涙をぐいっと拭う。その行動に一言感謝の言葉を返し解放された手首をさすりながら状態を起こす。それに合わせ神無は少し後ろへ引いた。そしてお互い向き合う格好になった。


「僕はさ、相手の事をたくさん知ってると嫌いになれないと思う。だってそれがその人だから。神無は僕の一番近くにいる相手。大体何でも知ってる。だから自分も曝け出せる。お互い知ってるから好きになれる。…僕はそう思う。」


「僕は…。」


神無が言葉を遮り自分の思いを分かっていて欲しくて先に告げる。そして笑みを浮かべる。


「神無が僕を好きじゃないかもしれない。先輩を好きかもしれない。でも僕はどんな神無でも受け止める。それが“神無”だからね。僕が神無を好きなのはずっと変わんないよ?」


「水無…ごめん。水無はこんな僕をまだ思ってくれるの?」


水無は微笑んだままゆっくりと瞬きをしながら頷く。


「さっき水無が言ってた言葉聞いてから僕なりに考えてた。…僕は水無が好き。ちゃんと恋愛感情として。でも先輩も好き。…それは多分憧れとしてだったんだ。僕は自分の理想と先輩を重ねてたんだと思う。それに、水無が言った通り先輩の事、殆ど知らない。僕の一番側にいて心配してくれてたの水無だけだったんだね。」


「神無…」


初めて聞いた神無の心からの思いや考え。普段なかなかこういう話はしない。というより無いと言っても過言ではない。水無は言ってくれたことにただ嬉しかった。自分と先輩との違いも明らかになったことも含め。やんわりとした暖かいものに包まれていくようだった。


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