YO★RA
このまま学校から出ようとした。
だが荷物を教室に置き忘れてしまったため、1校時の移動教室の時間がくるまで屋上にいることにした。
それにまだ親は家にいると思い、痛い思いはしたくなかった。
授業をサボるのだからどっちにしろ怒られるとわかっている。
それでも、怒られる時間が少しでも遅くにと…。

外はひんやりとした涼しい風ピューピューと吹いていた。
草は風になびいてカサカサ、サワサワと。
暗く、悲しくなっていた彼女にとってその音は、声に聞こえた。
自分を慰めてくれている声に。
事実上、草や風は喋ってなどいない。
でも、そう聞こえた。
そう思わなければ…自分は壊れてしまいそうで怖かった。
時が過ぎるまで、その風にあたっていた。
心を落ち着かせるためにも。

移動教室の時間が少し過ぎた頃に教室に戻った。
そこには1人の女子がいた。
架椰だった。
とっさに彼女は架椰と話し合いたい。
虐待されていることを話さないとしても…。
この悪い疑いは解きたかった。
そして、彼女は架椰に言った。
「今、少し話せない?誤解を解きたい!そして、仲直りしたい!」
だが架椰は
「あんたとは、友達っていうあくまでも設定。うちは、一度たりともあんたを友達と思ってことがないしね。」と。
辛い言葉であった。
そして
「あんたとは話したくないし、顔も見たくない!!」
「架椰…。私…何か貴女に悪いことしたことあった?」
「ないよ…。けど、いい子ぶってる子は嫌い!」
「別に私はいい子ぶってなどいない。」
「嘘つけ!!」
こんなやり取りがしばらく続いた。
だが、結局仲直りなどできなかった。
架椰はダッシュで移動教室に向かった。
夜羅は一人ぼっちになってしまった。
彼女一人だけの空間は殺風景で、空気が重々しかった。
その後、彼女は急いで学校を出た。
そして、少し商店街を寄り道してから家に帰った。





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