キリと悪魔の千年回廊 (りお様/イラスト)
腕の中でキリの全身から力が抜けて、ラグナードは慌てた。

「おい、キリ……!?」

ずるずると崩れ落ちるキリを抱き留める。

「少し眠ったら、元気になるからだいじょうぶ……また飛行騎杖も、飛ばせるよ……」

キリの言葉に安堵の息を吐いて、

それからラグナードは少女の手が氷のように冷え切っていることに気づいた。

「キリ、寒いのか……?」

冷気を消していた魔法の維持ができなくなっているのだ。

ラグナードは急いで、マントをはずして少女を包み込んだ。

「いいよ、ラグナードも……寒いでしょ……?」

「俺は平気だ。ドラゴンがいなくなったから、この辺りもすぐに初夏の気温に戻るだろう」

マントでくるんだキリを抱き上げて、ラグナードはいまだ氷漬けになったままの町を見回した。

町の様子を調べるため、キリを抱っこしたまま歩き出す。

「お前は安心して寝ていろ」

「うん……」

彼の腕の中で、少女がすうすうと寝息を立て始めた。



キリを抱いて町の中を歩きながら、


派兵した三百の兵士たちは、どこで凍りついているのか──できるなら見つけ出してから王宮に戻りたい、

やはりパイロープ山の山中だろうか、噴火が一段落したら山を探してみるかと、ラグナードはそう考えて、


それから、

あのドラゴンが口にしたことを思い出した。


「誇りを傷つけられた」と、あの天空の生き物は語っていた。


あれはどういう意味だったのだろうか。


今となってはもう知るすべもないが……と、ラグナードは首を一振りする。

そのときだった。


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