キリと悪魔の千年回廊 (りお様/イラスト)
「わかった」

キリが震える手を伸ばし、ラグナードの手の上からレーヴァンテインにふれた。

「やってみる……!」


息をととのえ、キリがあやしく光る瞳にレーヴァンテインを映す。

昨夜、彼女が洞穴の地面に手で描いたのと同じ魔法陣が、魔法によって描かれた赤く輝く光の線として、剣の上の空中に現れた。

"第一にバチカル・第二にエーイーリー・第三にシェリダ・第四にアディシェス・第五にアクゼリュス・第六にカイツール・第七にツァーカブ・第八にケムダー・第九にアィーアツブス"

キリがぶつぶつと呪文を唱え始める。

"我はドミナス・リミニス
境界の主の命において──"


『何をする気だ……?』

ドラゴンが警戒したように、傷ついた体をひきずって少し後退した。


剣で戦うのに、間合いをあけられては不利になる。

ラグナードはあわてて前に出るが、ドラゴンはさらに大きく後ろへと退いた。


"──君臨せよ"


キリが呪文が唱えるうちに、昨夜と同様に剣の刻印と宝玉が輝き始めた。


"第一にケテル・第二にコクマ・第三にビナー・第四にケセド・第五にゲブラー・第六にティファレト・第七にネツァク・第八にホド・第九にイェソド"


キリはここまでは昨夜と同じ呪文を唱えて、


"愚鈍には知恵を
拒絶には理解を
虚無には慈悲をもって霧へと還れ"


昨夜とは異なる文句を三つ口にした。


"第十にキムラヌート・第十にマルクト
物質は王国の剣たるべし"


そう唱え終わって、

「あと三つ──封印を解放する……!」

と、キリはラグナードに言った。



その瞬間、



澄んだ音を立てて、
剣に埋めこまれていたターコイズ、真珠、サファイアが割れ、

剣の刻印が三つ消えた。



剣の刃から、深紅の炎が上がる。


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