キリと悪魔の千年回廊 (りお様/イラスト)
年のころなら、キリと同じくらいだろうか。

十六歳から十八歳くらいのやや目つきの鋭い少年だ。


キリに言われて、ラグナードは確かに当たり前かと思った。

裸だったドラゴンが人間の姿になったとたんに服を着ていたら、そっちのほうがおかしな話だが──


たとえ男同士でも、ラグナードにとっては他人の全裸などそうそう目にするようなものではなかった。

恥じることもなく平然と素肌をさらして突っ立っている少年には、思わず顔をしかめてしまう。


「えー? まちがってるよ! 人間の姿と違ってる!」


一方のキリは、ラグナードの横で断言した。

ラグナードはけげんに思ってキリを見る。

服を着ていないことを除けば、少年の姿形自体には特におかしな点は見あたらない。


キリは、じーっとドラゴンの体の一点に視線を注ぎ、


「人間の体にこんなものはついてません!」


少年の足の付け根のあたりにぶら下がった物体を指さして、きっぱりと言い放った。


「そこはまちがっていない!」


ラグナードはあわてて、キリの目を片手で覆い隠した。


「前が見えないー」

「見るんじゃない!」

「えー?」

文句を言うキリに、

「男の体にはついてるんだ、それは」

と、ラグナードは教えてやった。

「そうなの!?」

キリは目隠しをされたまま目をしばたたいた。

ラグナードは片手でキリの頭をつかんでくるりと反対側を向かせて、ため息をはいた。

「ったく、お前にはつつしみというものはないのか」

「ええ? 男の人の体ってそんなのくっついてるの? ラグナードも?」

ラグナードは苦笑して、

「俺の裸が見たいなら」

いたずらめいた目になって、何も知らない少女のアゴに手をかけた。

「今度は毒のキスなどしないことだな。ベッドの中でたっぷり教えてやる」

「やだよ。なんでわざわざベッドの中なの?」

返ってきた色気のないセリフに、ラグナードは頬を引きつらせる。

それから、
寒くないのか、裸のままはだしで凍った道の上に突っ立っている少年をふり返った。

「貴様も俺に仕えるというのなら、最初の命令だ! まずは服を着ろ!」
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