キリと悪魔の千年回廊 (りお様/イラスト)
「そのしゃべり方も外見に合ってないし」

と、キリは首を振った。

ドラゴンの古風な口調は、どう考えても白髪の老人の姿のほうがしっくりくる。

「どうして少年の姿なのか、わかんない」

「理由は簡単だ」と、ジークフリートという名の天の人は言った。

「まず、男か女かで言えば我は男だ」

「なるほど」

キリが、さきほど目にした謎の物体を思い出して納得して、ラグナードはこめかみを押さえた。

「そして我は子供だ」

「……はい?」

目を丸くした二人に、

「我の他の仲間は皆、千年以上の時を生きている。
まだ生まれてより四百余年しか生きておらぬ我は、地上の人で言えばこのくらいの姿の齢のはずだが──」

ジークフリートはそう語って、足下の凍った地面に映った自らの姿をながめた。

「しゃべり方が合っておらぬ──とはつまり、このような外見の年齢にある地上の人は、我のようなしゃべり方はせぬということか?」

「まあ、そういうこと……」

キリは衝撃を受けながら、そう返した。

四百年以上生きていても、天の人にとってはまだ少年の年齢だとは──。

「ふうむ」とジークフリートは、また少年らしからぬ声でうなった。




「それで、貴様は俺とキリに仕えると言っていたが──これからどうする気だ?」

ラグナードは雪の化身のような少年にたずねた。

「無論、我を大地にたたきつけた者が見つかるまで行動を共にさせてもらおう」

「では、これから城にもどる俺たちについてくるということか」

「そうなるな」

ジークフリートがうなずいて、

「あ、でもでも」とキリが声を上げた。

「わたしはお城に行ってごほうびの杖をもらったら、ゴンドワナに帰るよ」

うれしそうに言うキリをちらっと見て、ラグナードは「だめだ」と首を横に振った。

「パイロープの異変を引き起こした真犯人はまだわかっていないんだ。
黒幕が見つかるまでは、褒美の杖を与えるわけにはいかないな」

「なんで!?」

キリはごそごそと懐から羊皮紙を引っぱり出して、契約書をラグナードに見せた。

「わたしはパイロープの奪還に手を貸すっていう契約をしたんだもん。
パイロープはもう無事にガルナティスに戻ってきたんだから、契約は終わり! わたしは杖をもらって帰るんだから」
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