キリと悪魔の千年回廊 (りお様/イラスト)
「そういう掃除は、晴れた日に屋外で行うものだ!」
どんどんバンバン、棍棒を握った手を止めることなく粉塵をまき散らし続ける少女を止めようと、騎士は必死の説得を試みた。
「こんな嵐の夜に、雨戸を締め切って室内でやる非常識な人間がいるか!」
ここに一人いるようではあるが。
当然ながら、部屋の中には行き場のないホコリが充満して、目も当てられない──むしろ開けられない有様だ。
初対面の人間にまったくかまわず、少女は粛々とベッドに打撃を与え続け、
やがて満足ゆくまでたたき終えたのか、作業の手を止めた。
「よしっ、キレイになった」
「なってない!」
ホコリだらけにされた部屋の中で、全身ホコリまみれにされた美青年は全力で否定した。
「うるさいなー。
こんな夜にいきなり訪ねてきて、なんなのよう、あなた」
面倒くさそうに言って、少女は本棚にたてかけていたベッドマットを動かしにかかった。
その言葉でようやくここに来た目的を思い出し、騎士は部屋中に飛散して漂うホコリの中を見回した。
部屋の中には非常識なこの娘しか住人の姿は見あたらないが、
奥に、別の部屋へと続く扉を一つ認めて口を開く。
「娘、貴様のご主人様はその奥か?」
「ご主人様?」
ベッドの上に勢いよくマットを倒して、少女が問い返した。
またしても、もうもうとホコリが舞い上がった。
パンパン、と一仕事終えた様子でエプロンをはたいて青年を振り返る少女は、メイド姿だ。
年齢と格好からして、この家の主に仕える使用人というところだろうと思われた。
「俺はこの家に住む魔法使いに用があって来た」
この家の主──
「ここは、五つの大陸で唯一の『霧の魔法使い』の家だろう?」
奥の扉を示し、白銀の鎧をまとった騎士は美しい顔に真剣な表情を作った。
「奥にいる主に取り次げ。力を借りたい者が来ているとな」
どんどんバンバン、棍棒を握った手を止めることなく粉塵をまき散らし続ける少女を止めようと、騎士は必死の説得を試みた。
「こんな嵐の夜に、雨戸を締め切って室内でやる非常識な人間がいるか!」
ここに一人いるようではあるが。
当然ながら、部屋の中には行き場のないホコリが充満して、目も当てられない──むしろ開けられない有様だ。
初対面の人間にまったくかまわず、少女は粛々とベッドに打撃を与え続け、
やがて満足ゆくまでたたき終えたのか、作業の手を止めた。
「よしっ、キレイになった」
「なってない!」
ホコリだらけにされた部屋の中で、全身ホコリまみれにされた美青年は全力で否定した。
「うるさいなー。
こんな夜にいきなり訪ねてきて、なんなのよう、あなた」
面倒くさそうに言って、少女は本棚にたてかけていたベッドマットを動かしにかかった。
その言葉でようやくここに来た目的を思い出し、騎士は部屋中に飛散して漂うホコリの中を見回した。
部屋の中には非常識なこの娘しか住人の姿は見あたらないが、
奥に、別の部屋へと続く扉を一つ認めて口を開く。
「娘、貴様のご主人様はその奥か?」
「ご主人様?」
ベッドの上に勢いよくマットを倒して、少女が問い返した。
またしても、もうもうとホコリが舞い上がった。
パンパン、と一仕事終えた様子でエプロンをはたいて青年を振り返る少女は、メイド姿だ。
年齢と格好からして、この家の主に仕える使用人というところだろうと思われた。
「俺はこの家に住む魔法使いに用があって来た」
この家の主──
「ここは、五つの大陸で唯一の『霧の魔法使い』の家だろう?」
奥の扉を示し、白銀の鎧をまとった騎士は美しい顔に真剣な表情を作った。
「奥にいる主に取り次げ。力を借りたい者が来ているとな」