キリと悪魔の千年回廊 (りお様/イラスト)
城門から続く白い石の道は、
パラスの前で壮麗な大理石の屋外階段につき当たった。
大きな階段の両側にも、城門と同様に槍を構えたフルメタルの兵士たちが立っている。
「言っておくが」
カーバンクルス城の中核であり、宮廷が開かれる居館──パラスの大広間へとのびるその大階段の前で、
ラグナードは、完全に田舎から出てきたお上りさんと化している二人のほうをふり向いた。
「王宮内の他の者の前で、俺を呼び捨てにするのはやめておけ。
王族不敬罪で即刻牢獄行きだ」
「はいはぁい」
と、キリが軽い調子で返事をした。
「わっかりました、殿下!」
先刻の兵士たちとのやりとりを思い出して、キリはふくみ笑いをしながらそう言った。
完全におもしろがっていた。
「ああ、了解した」
と、上の空で宮殿を見上げてジークフリートもうなずいた。
「忠告はしたぞ」
不安を覚えつつ、ラグナードは大理石の階段を上がり始めた。
二人がその後に続く。
「それにしても、カーバンクルスってどうして真っ黒?」
階段を上がりながら、キリは不思議に思っていたことをたずねた。
「黒いのもチョコみたいでかわいいけど、お城の壁ってふつうは白いイメージなのに」
このパラスも、他の建物も、壁はすべて黒い石で造られている。
「やっぱり攻められたときに、頑丈な石だから?」
「それもあるが……」
ラグナードは少し苦笑した。
「滝を見ただろう?」
「滝?」
言われて、キリは宙に浮いた岩山から流れ落ちる水を思い描いた。
しかし建物の壁を黒い石で造るのと、滝とがどう関係するのかわからない。
「このカーバンクルスが建つ軽鉱の岩山は、雨や大気中の水分を吸収して内部に蓄える性質があるんだ。
おかげで空の上でもわき水の泉があって、飲み水には苦労しないが──湿気がひどい」
「へ?」
意外な話に、キリはまのぬけた声を上げた。
「この黒い石は頑丈でもあるが、湿気やカビを防ぐ効果がある。
それで、築城のときに使われたと聞いている」
そんな理由で黒い石の城だったのかと、キリはびっくりした。
「だから今でも城の改装工事や増築のときには、必ずこの黒い石を使っている」
そう言って、ラグナードは大階段の一番上で足を止めた。
パラスの前で壮麗な大理石の屋外階段につき当たった。
大きな階段の両側にも、城門と同様に槍を構えたフルメタルの兵士たちが立っている。
「言っておくが」
カーバンクルス城の中核であり、宮廷が開かれる居館──パラスの大広間へとのびるその大階段の前で、
ラグナードは、完全に田舎から出てきたお上りさんと化している二人のほうをふり向いた。
「王宮内の他の者の前で、俺を呼び捨てにするのはやめておけ。
王族不敬罪で即刻牢獄行きだ」
「はいはぁい」
と、キリが軽い調子で返事をした。
「わっかりました、殿下!」
先刻の兵士たちとのやりとりを思い出して、キリはふくみ笑いをしながらそう言った。
完全におもしろがっていた。
「ああ、了解した」
と、上の空で宮殿を見上げてジークフリートもうなずいた。
「忠告はしたぞ」
不安を覚えつつ、ラグナードは大理石の階段を上がり始めた。
二人がその後に続く。
「それにしても、カーバンクルスってどうして真っ黒?」
階段を上がりながら、キリは不思議に思っていたことをたずねた。
「黒いのもチョコみたいでかわいいけど、お城の壁ってふつうは白いイメージなのに」
このパラスも、他の建物も、壁はすべて黒い石で造られている。
「やっぱり攻められたときに、頑丈な石だから?」
「それもあるが……」
ラグナードは少し苦笑した。
「滝を見ただろう?」
「滝?」
言われて、キリは宙に浮いた岩山から流れ落ちる水を思い描いた。
しかし建物の壁を黒い石で造るのと、滝とがどう関係するのかわからない。
「このカーバンクルスが建つ軽鉱の岩山は、雨や大気中の水分を吸収して内部に蓄える性質があるんだ。
おかげで空の上でもわき水の泉があって、飲み水には苦労しないが──湿気がひどい」
「へ?」
意外な話に、キリはまのぬけた声を上げた。
「この黒い石は頑丈でもあるが、湿気やカビを防ぐ効果がある。
それで、築城のときに使われたと聞いている」
そんな理由で黒い石の城だったのかと、キリはびっくりした。
「だから今でも城の改装工事や増築のときには、必ずこの黒い石を使っている」
そう言って、ラグナードは大階段の一番上で足を止めた。