キリと悪魔の千年回廊 (りお様/イラスト)
「お久しぶりです」
宰相閣下──?
キリは、ラグナードから発せられた言葉を胸の中で反芻して、目の前の美人をしげしげとながめた。
「やあねェ。ラグってば、半年ぶりなのにそんな他人行儀なあいさつ」
つややかな唇で軽い口調のセリフをつむぐこのきれいなお姉様が、この国の宰相ということなのだろうか──と、
キリは、何度も目をしばたたいた。
「あら?」
あでやかな赤茶の瞳が、ラグナードの横にいるキリを映した。
「だあれ? かわいいコ連れてるじゃない」
白い指がキリの頬にのびて、唇をなでた。
「はにゃ?」
いきなりのことにキリは目を丸くして、
「このド変態が! キリにふれるなッ」
ラグナードがどなってその手をぱしんとはたき、
キリと美人との間に立ちはだかった。
「いったぁい」
たたかれた手を押さえて「相変わらず野蛮な子ねえ」と文句を言う美人と、
「用がないならさっさと失せろ!」
怒りに顔を染めてわめくラグナードとを、
キリはぽかんと見くらべた。
「俺たちは陛下に呼ばれたんだ。
ここであんたと話をしているヒマはない」
宰相だという美人は、「あら、残念」と言ってけらけら笑い、
「キリちゃんっていうのね。じゃ、またあとでね」
キリに向かってウィンクした。
執事が執務室の扉をノックして、「お連れしました」と中に声をかける。
開かれた扉からラグナードが中へと入り──
「ちょっと、ヤダ! こっちのコなに!? 背中に羽が生えてるわよっ」
立ち去りかけていた美人宰相が、ジークフリートの背を指さしてさわいだ。
「かまうな」
と言って、美人を黙殺してラグナードが部屋の中に消え、
キリとジークフリートも後に続く。
廊下の外に立った執事が扉を閉め、三人の背後でけたたましい声が遠のいた。
宰相閣下──?
キリは、ラグナードから発せられた言葉を胸の中で反芻して、目の前の美人をしげしげとながめた。
「やあねェ。ラグってば、半年ぶりなのにそんな他人行儀なあいさつ」
つややかな唇で軽い口調のセリフをつむぐこのきれいなお姉様が、この国の宰相ということなのだろうか──と、
キリは、何度も目をしばたたいた。
「あら?」
あでやかな赤茶の瞳が、ラグナードの横にいるキリを映した。
「だあれ? かわいいコ連れてるじゃない」
白い指がキリの頬にのびて、唇をなでた。
「はにゃ?」
いきなりのことにキリは目を丸くして、
「このド変態が! キリにふれるなッ」
ラグナードがどなってその手をぱしんとはたき、
キリと美人との間に立ちはだかった。
「いったぁい」
たたかれた手を押さえて「相変わらず野蛮な子ねえ」と文句を言う美人と、
「用がないならさっさと失せろ!」
怒りに顔を染めてわめくラグナードとを、
キリはぽかんと見くらべた。
「俺たちは陛下に呼ばれたんだ。
ここであんたと話をしているヒマはない」
宰相だという美人は、「あら、残念」と言ってけらけら笑い、
「キリちゃんっていうのね。じゃ、またあとでね」
キリに向かってウィンクした。
執事が執務室の扉をノックして、「お連れしました」と中に声をかける。
開かれた扉からラグナードが中へと入り──
「ちょっと、ヤダ! こっちのコなに!? 背中に羽が生えてるわよっ」
立ち去りかけていた美人宰相が、ジークフリートの背を指さしてさわいだ。
「かまうな」
と言って、美人を黙殺してラグナードが部屋の中に消え、
キリとジークフリートも後に続く。
廊下の外に立った執事が扉を閉め、三人の背後でけたたましい声が遠のいた。