キリと悪魔の千年回廊 (りお様/イラスト)
白い霧が形を持ったかのように霧の中からつきだした無数の腕は、

ずるずると、つかまえた女の子を引きずって霧の中へと消え始めました。


「たすけて!」

白い、白い、真っ白な霧の中へと腕に引き込まれながら、女の子が繰り返しました。


見開かれた幼い目が王子様を映し、

救いを求めた手がこちらへと伸ばされるのを見て、


「……ひっ」

にわかにとてつもない恐ろしさがわき起こり、王子様ののどからは、そんな音が漏れました。


「たすけて、たすけて、たすけ……」

繰り返す女の子の体が勢いよく引っぱられ、すさまじい早さで霧の奥へと消えます。


王子様ははね起き、
響き渡ったけたたましい絶叫に背を向けて、

まろぶように逃げ出しました。
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