キリと悪魔の千年回廊 (りお様/イラスト)
「そんな連中がそろって、現在最強の魔法使いだと口にしたのが【霧のシムノン】だ。
奴らの話によると、世界中の魔法使いが使う数ある魔法の中で、千年に一人しかそれを行える者が現れないと言われる魔法、
現在、この世界でたった一人しか扱うことができる者がいないとされる魔法がある。
この地に生きるすべての存在にとって『霧』は最大の不吉だが──
その霧の力を意のままに操ることができる魔法。
すべての魔法の頂点と言われる力。
千年前に唯一この魔法を使えたという魔法使いは、史上最強の魔法使いとして永遠に歴史に名を刻んだ。
そんな『霧の魔法』を、現在ただ一人扱うことができる魔法使いがいると。
それが大賢者と呼ばれる【霧のシムノン】だとな」
そう語って、
ラグナードは女ならば誰もが思わず見とれるような真剣なまなざしにキリを映した。
「彼ならばパイロープの異変を何とかできるだろうという連中の話に賭けて、俺は三ヶ月かけてようやくこの場所を探し当てた。
本人には会えなかったが──キリ、弟子のお前にはパイロープの異変の正体がわかるか?
ガルナティスの宮廷魔術師にどうにもできなかった怪物を、お前なら倒せるか?」
「まあ、空の上の国の王子様が一人で嵐の晩に訪ねて来た理由はわかったけど」
乙女の心をときめかせるような紫の視線にも、特に何の反応も示さず、キリは冷静にうなずいた。
「今の話が本当だとするなら」
「本当だッ」
怒りの表情になるラグナードに、
「今の話が本当だとするなら──」
と、キリはもう一度言って、細い指を二本立てた。
「間違いが二つある」
「どういうことだ?」
「まず、一つ目の間違いは──」
キリは意味ありげに笑んだ。
「あなたが探してたのは、シムノンのクソジジイじゃなくてわたしだってこと」
どういう意味かわからず、ラグナードは目の前の少女の明るい色の瞳を見つめた。
「あのクソジジイはね、霧の魔法なんてイッコも使えなかったよ」
奴らの話によると、世界中の魔法使いが使う数ある魔法の中で、千年に一人しかそれを行える者が現れないと言われる魔法、
現在、この世界でたった一人しか扱うことができる者がいないとされる魔法がある。
この地に生きるすべての存在にとって『霧』は最大の不吉だが──
その霧の力を意のままに操ることができる魔法。
すべての魔法の頂点と言われる力。
千年前に唯一この魔法を使えたという魔法使いは、史上最強の魔法使いとして永遠に歴史に名を刻んだ。
そんな『霧の魔法』を、現在ただ一人扱うことができる魔法使いがいると。
それが大賢者と呼ばれる【霧のシムノン】だとな」
そう語って、
ラグナードは女ならば誰もが思わず見とれるような真剣なまなざしにキリを映した。
「彼ならばパイロープの異変を何とかできるだろうという連中の話に賭けて、俺は三ヶ月かけてようやくこの場所を探し当てた。
本人には会えなかったが──キリ、弟子のお前にはパイロープの異変の正体がわかるか?
ガルナティスの宮廷魔術師にどうにもできなかった怪物を、お前なら倒せるか?」
「まあ、空の上の国の王子様が一人で嵐の晩に訪ねて来た理由はわかったけど」
乙女の心をときめかせるような紫の視線にも、特に何の反応も示さず、キリは冷静にうなずいた。
「今の話が本当だとするなら」
「本当だッ」
怒りの表情になるラグナードに、
「今の話が本当だとするなら──」
と、キリはもう一度言って、細い指を二本立てた。
「間違いが二つある」
「どういうことだ?」
「まず、一つ目の間違いは──」
キリは意味ありげに笑んだ。
「あなたが探してたのは、シムノンのクソジジイじゃなくてわたしだってこと」
どういう意味かわからず、ラグナードは目の前の少女の明るい色の瞳を見つめた。
「あのクソジジイはね、霧の魔法なんてイッコも使えなかったよ」