キリと悪魔の千年回廊 (りお様/イラスト)
「王宮の宝物庫のどこかにあるなら、管理官にきくか……あるいはお前の言葉が本当なら、国王陛下に尋ねたら所在がわかるだろう」
「ほんとに杖くれるの?」
「ああ。存在するものならな」
「ほんとにほんと?」
ラグナードは苦笑した。
「その杖がどんなに大切なものだったとしても、ガルナティスにとってはパイロープを放棄することに比べたら大した価値はない。
お前が怪物から見事にパイロープを奪還してみせたなら、国王陛下もそんな杖一本、褒美として譲渡することに反対はしないだろう」
「やったあ」と喜ぶキリに、「しかしいいのか?」とラグナードは冷ややかな口調できいた。
「俺は聞いたこともなかったんだ。
杖の所在など誰も知らない可能性もあるし、ヴェズルングの杖とやらがガルナティスにあるかはわからんぞ?
もしも杖が存在しないと判明すれば、お前はただ働きになるが……この条件で本当にいいんだな?」
「だいじょうぶ! 杖は絶対にあるよ! 昔からそう言われてるんだもん。
見つからなくても、探せばきっと出てくるよ」
「見つからなくても、探せばきっと」か──。
ラグナードはほくそ笑む。
「いいだろう。
お前は怪物からパイロープを奪還するのに手を貸す。
見事に成功すれば、俺は褒美としてヴェズルングの杖をお前にやると約束しよう。
杖が見つかるまでは、いつまででもガルナティスに滞在することを許してやる」
口の端をつり上げて、氷の微笑をうかべながらラグナードはそう言った。
もちろん──
彼には素直にその杖とやらをキリに渡してやる気はさらさらなかった。
そもそもそんなおとぎ話のような杖が存在している可能性などきわめて低いし、ガルナティス内で話すら伝わっていない千年も前の品を探してもまず見つからないだろうと、ラグナードは考えていた。
いや、見つからないほうがいい。
探せばきっと出てくると信じているならば、杖が出てくるまでこの娘は永遠にガルナティスに留まり続けることになるのだ。
仮に、すぐに見つかったとしても、まだ探しているとうそをつけばいい。
これで、力のある魔法使いをいつまででもガルナティスに縛りつけておくことができる。
「すべては、本当にお前がパイロープの異変を何とかできる力を持っていたらの話だがな」
「何とかしてあげる! わたしがんばるよ!」
目の前の人間の胸の内など何も知らず、少女は手放しに大喜びしている。
「わあい! ありがとう、ラグナード」
だまされるとも知らずに無邪気な笑顔を向けてくる娘の姿は、彼の胸に少しだけ、ちくりとした痛みを与えた。
「ほんとに杖くれるの?」
「ああ。存在するものならな」
「ほんとにほんと?」
ラグナードは苦笑した。
「その杖がどんなに大切なものだったとしても、ガルナティスにとってはパイロープを放棄することに比べたら大した価値はない。
お前が怪物から見事にパイロープを奪還してみせたなら、国王陛下もそんな杖一本、褒美として譲渡することに反対はしないだろう」
「やったあ」と喜ぶキリに、「しかしいいのか?」とラグナードは冷ややかな口調できいた。
「俺は聞いたこともなかったんだ。
杖の所在など誰も知らない可能性もあるし、ヴェズルングの杖とやらがガルナティスにあるかはわからんぞ?
もしも杖が存在しないと判明すれば、お前はただ働きになるが……この条件で本当にいいんだな?」
「だいじょうぶ! 杖は絶対にあるよ! 昔からそう言われてるんだもん。
見つからなくても、探せばきっと出てくるよ」
「見つからなくても、探せばきっと」か──。
ラグナードはほくそ笑む。
「いいだろう。
お前は怪物からパイロープを奪還するのに手を貸す。
見事に成功すれば、俺は褒美としてヴェズルングの杖をお前にやると約束しよう。
杖が見つかるまでは、いつまででもガルナティスに滞在することを許してやる」
口の端をつり上げて、氷の微笑をうかべながらラグナードはそう言った。
もちろん──
彼には素直にその杖とやらをキリに渡してやる気はさらさらなかった。
そもそもそんなおとぎ話のような杖が存在している可能性などきわめて低いし、ガルナティス内で話すら伝わっていない千年も前の品を探してもまず見つからないだろうと、ラグナードは考えていた。
いや、見つからないほうがいい。
探せばきっと出てくると信じているならば、杖が出てくるまでこの娘は永遠にガルナティスに留まり続けることになるのだ。
仮に、すぐに見つかったとしても、まだ探しているとうそをつけばいい。
これで、力のある魔法使いをいつまででもガルナティスに縛りつけておくことができる。
「すべては、本当にお前がパイロープの異変を何とかできる力を持っていたらの話だがな」
「何とかしてあげる! わたしがんばるよ!」
目の前の人間の胸の内など何も知らず、少女は手放しに大喜びしている。
「わあい! ありがとう、ラグナード」
だまされるとも知らずに無邪気な笑顔を向けてくる娘の姿は、彼の胸に少しだけ、ちくりとした痛みを与えた。