キリと悪魔の千年回廊 (りお様/イラスト)
これまで彼の周囲にいた女たちは、こんな風に彼に見つめられたら、誰もが頬を染めてオロオロと途方に暮れた。
当然、目の前の娘も似たような反応を示すだろうと、彼はその反応を楽しむつもりだったのだが……。
涙を浮かべていた少女の表情がぱっと明るくなった。
「いいの?」
キリは頬をほころばせると、手にしていたラグナードの鎧をテーブルの上に置き──
──あろうことか、エプロンやスカアトを恥じらいもせずにその場で脱ぎ始めた。
予想外の行動にあっけにとられるラグナードの前で、メイドの服を脱ぎ捨てアンダードレス一枚になり、少女は自分のために空けられたベッドのスペースにためらいなくふわりと潜り込んだ。
「おい……!」
少女の体温を感じて、ラグナードは我に返り声を上げた。
「なあに? 一緒に寝てもいいんでしょ?」
互いの鼻先がくっつくような至近距離で、キリがかわいい顔に人なつっこい笑顔を作ったまま言った。
彼女が魔法を使ったのか、ふうっと天井からつるされたランプの灯りが消える。
「お前、意味がわかっているのか……?」
ほの暗くなった部屋の中で音を立てて暖炉の火がはぜ、唯一の明かりとなった炎の赤い色が二人の顔を照らした。
少なくとも、彼が知る貴族の令嬢たちは決して、男の前で肌をさらすようなふしだらなマネはしない。
「今夜知り合ったばかりの男の前で、その……服を脱いで……同じベッドに潜り込むなんて、お前……どういう女なんだ──!?」
彼の目には男などまったく知らない純情そうな田舎娘にしか見えなかったが、こんな森の奥に一人きりで住んでいて誰を相手に遊び慣れているというのだろうか。
相手を困らせてやるつもりが、ラグナードは逆にうろたえた。
視界のはしには下着一枚となった少女の胸元が否応なしに映りこむ。
横になったせいで乱れた襟から、小ぶりながらも形のいい胸のふくらみが、薄闇の中に白く浮かび上がって見えていた。
「なにが?」と、小さくあくびをして、キリは猫のようにラグナードにすり寄った。
やわらかな髪がラグナードの頬をくすぐり、温かな吐息が首筋にかかる。
それからキリは顔を上げて、見とれるようにしげしげと緑の輝きをラグナードの顔に向けた。
やがて綺麗な長いまつげに縁取られた彼女のまぶたが少しずつ閉じられていくのを見て、ようやくラグナードは悟った。
混乱から一瞬で優位に立ち戻り、口元が冷笑の形につり上がる。
「ふうん、そういうことか」
つまり、
初対面の男の前で何の警戒心も抱かずに下着一枚になり、同じベッドの中で身を寄せて無防備にまどろみに落ちるほどに、この娘は男を知らないのだ。
それならば──
どういうことになるのか、男というものを教えてやる必要があるな。
当然、目の前の娘も似たような反応を示すだろうと、彼はその反応を楽しむつもりだったのだが……。
涙を浮かべていた少女の表情がぱっと明るくなった。
「いいの?」
キリは頬をほころばせると、手にしていたラグナードの鎧をテーブルの上に置き──
──あろうことか、エプロンやスカアトを恥じらいもせずにその場で脱ぎ始めた。
予想外の行動にあっけにとられるラグナードの前で、メイドの服を脱ぎ捨てアンダードレス一枚になり、少女は自分のために空けられたベッドのスペースにためらいなくふわりと潜り込んだ。
「おい……!」
少女の体温を感じて、ラグナードは我に返り声を上げた。
「なあに? 一緒に寝てもいいんでしょ?」
互いの鼻先がくっつくような至近距離で、キリがかわいい顔に人なつっこい笑顔を作ったまま言った。
彼女が魔法を使ったのか、ふうっと天井からつるされたランプの灯りが消える。
「お前、意味がわかっているのか……?」
ほの暗くなった部屋の中で音を立てて暖炉の火がはぜ、唯一の明かりとなった炎の赤い色が二人の顔を照らした。
少なくとも、彼が知る貴族の令嬢たちは決して、男の前で肌をさらすようなふしだらなマネはしない。
「今夜知り合ったばかりの男の前で、その……服を脱いで……同じベッドに潜り込むなんて、お前……どういう女なんだ──!?」
彼の目には男などまったく知らない純情そうな田舎娘にしか見えなかったが、こんな森の奥に一人きりで住んでいて誰を相手に遊び慣れているというのだろうか。
相手を困らせてやるつもりが、ラグナードは逆にうろたえた。
視界のはしには下着一枚となった少女の胸元が否応なしに映りこむ。
横になったせいで乱れた襟から、小ぶりながらも形のいい胸のふくらみが、薄闇の中に白く浮かび上がって見えていた。
「なにが?」と、小さくあくびをして、キリは猫のようにラグナードにすり寄った。
やわらかな髪がラグナードの頬をくすぐり、温かな吐息が首筋にかかる。
それからキリは顔を上げて、見とれるようにしげしげと緑の輝きをラグナードの顔に向けた。
やがて綺麗な長いまつげに縁取られた彼女のまぶたが少しずつ閉じられていくのを見て、ようやくラグナードは悟った。
混乱から一瞬で優位に立ち戻り、口元が冷笑の形につり上がる。
「ふうん、そういうことか」
つまり、
初対面の男の前で何の警戒心も抱かずに下着一枚になり、同じベッドの中で身を寄せて無防備にまどろみに落ちるほどに、この娘は男を知らないのだ。
それならば──
どういうことになるのか、男というものを教えてやる必要があるな。