キリと悪魔の千年回廊 (りお様/イラスト)
「な……ん……だと……?」
目の前が暗くなるような恐怖に襲われ、ラグナードはかすれた声を出す。
「言ってなかったけどシムノンのジジイはね、毒の属性の魔法使いだったの」
少女が説明しているが、耳に入ってはこなかった。
「だからわたしも、毒の魔法が少しだけ使えるんだ。ふふー、いいでしょ?」
自慢げにそう言うかわいい声は、悪魔のもののように聞こえた。
ベニヒカリダケは即効性の猛毒を持つキノコだ。
美味なヒカリダケと間違えて、わずかでも口にふくんだら最後。
ぱくりと一口、飲みこまなくてもあの世逝き。
すぐにはき出したとしても、口腔内の粘膜から吸収されてたちまちに致死性の毒が全身に回り、全身が麻痺して動けなくなり──
そうして死んだ生き物の死体にくっついた胞子からにょきにょきと生えて、ベニヒカリダケは増えていく。
精製したこのキノコの毒の用途はもっぱら暗殺用だ。
純真そうな顔をして、この魔女め……!
おぼつかなくなる思考に、少女がしてきた情熱的な甘い死のキスの味がよみがえり、ラグナードは心の中で毒づいた。
無駄だとわかってはいても、はき出さなくてはと思い、必死に指を口に持っていこうとするが、
ラグナードの体は完全に麻痺してもはや指一本動かせなくなっていた。
意識が遠のいていく。
「安心していいよ。わたしの毒の魔法は、せいぜい相手をしびれさせることしかできないから」
小さな魔女がまったく悪びれず楽しそうに言うのを聞きながら、彼の意識はとぎれた。
「あーびっくりした。わたし襲われちゃうとこだった」
静かになったベッドの上で、キリは大して動揺もしていない様子でのんびりつぶやいた。
ぱったりと突っ伏したまま動かなくなった美青年の体を転がし、横を向かせて、
「抱きまくらー」
なにやら幸せそうにぎゅうっと抱きついて少女は目を閉じる。
「さて、寝よっと」
暖炉でくすぶっていた残り火が消えて、部屋の中に闇が満ちた。
目の前が暗くなるような恐怖に襲われ、ラグナードはかすれた声を出す。
「言ってなかったけどシムノンのジジイはね、毒の属性の魔法使いだったの」
少女が説明しているが、耳に入ってはこなかった。
「だからわたしも、毒の魔法が少しだけ使えるんだ。ふふー、いいでしょ?」
自慢げにそう言うかわいい声は、悪魔のもののように聞こえた。
ベニヒカリダケは即効性の猛毒を持つキノコだ。
美味なヒカリダケと間違えて、わずかでも口にふくんだら最後。
ぱくりと一口、飲みこまなくてもあの世逝き。
すぐにはき出したとしても、口腔内の粘膜から吸収されてたちまちに致死性の毒が全身に回り、全身が麻痺して動けなくなり──
そうして死んだ生き物の死体にくっついた胞子からにょきにょきと生えて、ベニヒカリダケは増えていく。
精製したこのキノコの毒の用途はもっぱら暗殺用だ。
純真そうな顔をして、この魔女め……!
おぼつかなくなる思考に、少女がしてきた情熱的な甘い死のキスの味がよみがえり、ラグナードは心の中で毒づいた。
無駄だとわかってはいても、はき出さなくてはと思い、必死に指を口に持っていこうとするが、
ラグナードの体は完全に麻痺してもはや指一本動かせなくなっていた。
意識が遠のいていく。
「安心していいよ。わたしの毒の魔法は、せいぜい相手をしびれさせることしかできないから」
小さな魔女がまったく悪びれず楽しそうに言うのを聞きながら、彼の意識はとぎれた。
「あーびっくりした。わたし襲われちゃうとこだった」
静かになったベッドの上で、キリは大して動揺もしていない様子でのんびりつぶやいた。
ぱったりと突っ伏したまま動かなくなった美青年の体を転がし、横を向かせて、
「抱きまくらー」
なにやら幸せそうにぎゅうっと抱きついて少女は目を閉じる。
「さて、寝よっと」
暖炉でくすぶっていた残り火が消えて、部屋の中に闇が満ちた。