キリと悪魔の千年回廊 (りお様/イラスト)
火口をかすめて、騎杖が空へと舞い上がり、
パイロープの頂を上から見下ろして、二人の視界が火口にうずくまる怪物の全容をとらえる。
ほぼ同時に──
天地を震撼(しんかん)させる咆吼(ほうこう)を上げ、うずくまっていた「それ」が巨大な翼を広げて身を起こした。
コウモリの翼のような、翼膜を備えた両翼。
鋭いかぎ爪が生えそろった、巨岩のごとき四本の脚。
鋼の武器をもかみ砕くと言われる、頑強な口もとからはぞろりと並んだ牙がのぞき、
縦に裂けた瞳孔の双眸には蒼穹(そうきゅう)を思わせる青白い炎が灯っている。
どんな城の城壁も一撃で壊せそうな太い尾が、大地を叩く。
全身を覆う純白の羽毛が、雪のように舞い散った。
生まれて初めて間近に見る。
にも関わらず、二人は本や絵の中に頻繁に描かれるその生物をよく知っていた。
巨大な爬虫類と鳥の中間のような形態をした、その荘厳(そうごん)なる生き物は、青く燃える瞳をラグナードとキリに向け、
恐ろしくも美しい、怒(いか)れる天空の雄たけびをふたたび上げた。
晴れ渡った空から降り注ぐ朝の太陽の光に、まばゆいばかりに白く輝く羽毛を見下ろして、
「ドラゴンか……!」
「天の人──」
ラグナードとキリは、その生物の呼称をそれぞれ口にした。
身をたわめ、巨大な両翼を打って純白の巨躯が空へと舞い上がる。
大きく口を開けて飛行騎杖に食らいついてくるドラゴンを、ラグナードは騎杖を急降下させてなんとかかわした。
牙をかわされたと見るや、ドラゴンは首をめぐらせ開けた口をラグナードたちに向けて──
「よけて!! 」
キリが金切り声を上げた。
真っ赤な口の中から、ドラゴンが吐き出した液体窒素の噴射が二人を襲った。
ラグナードがふたたび騎杖を急上昇させて、一瞬で骨の髄まで凍らせる死の吐息からぎりぎりで逃れる。
「天の『人』だと!?」
剣を抜き放ちながら彼はどなる。
「あれのどこが人だ?」
「人だよ! 天空に住む人! 竜は怪物じゃない、高度な知性と理性がある──」
キリは悲鳴に近い声でさけんだ。
「なに──!?」
「あれは、わたしたち地上の魔法使いよりはるかに強力な魔力を持った、氷の魔法使いなの!」
パイロープの頂を上から見下ろして、二人の視界が火口にうずくまる怪物の全容をとらえる。
ほぼ同時に──
天地を震撼(しんかん)させる咆吼(ほうこう)を上げ、うずくまっていた「それ」が巨大な翼を広げて身を起こした。
コウモリの翼のような、翼膜を備えた両翼。
鋭いかぎ爪が生えそろった、巨岩のごとき四本の脚。
鋼の武器をもかみ砕くと言われる、頑強な口もとからはぞろりと並んだ牙がのぞき、
縦に裂けた瞳孔の双眸には蒼穹(そうきゅう)を思わせる青白い炎が灯っている。
どんな城の城壁も一撃で壊せそうな太い尾が、大地を叩く。
全身を覆う純白の羽毛が、雪のように舞い散った。
生まれて初めて間近に見る。
にも関わらず、二人は本や絵の中に頻繁に描かれるその生物をよく知っていた。
巨大な爬虫類と鳥の中間のような形態をした、その荘厳(そうごん)なる生き物は、青く燃える瞳をラグナードとキリに向け、
恐ろしくも美しい、怒(いか)れる天空の雄たけびをふたたび上げた。
晴れ渡った空から降り注ぐ朝の太陽の光に、まばゆいばかりに白く輝く羽毛を見下ろして、
「ドラゴンか……!」
「天の人──」
ラグナードとキリは、その生物の呼称をそれぞれ口にした。
身をたわめ、巨大な両翼を打って純白の巨躯が空へと舞い上がる。
大きく口を開けて飛行騎杖に食らいついてくるドラゴンを、ラグナードは騎杖を急降下させてなんとかかわした。
牙をかわされたと見るや、ドラゴンは首をめぐらせ開けた口をラグナードたちに向けて──
「よけて!! 」
キリが金切り声を上げた。
真っ赤な口の中から、ドラゴンが吐き出した液体窒素の噴射が二人を襲った。
ラグナードがふたたび騎杖を急上昇させて、一瞬で骨の髄まで凍らせる死の吐息からぎりぎりで逃れる。
「天の『人』だと!?」
剣を抜き放ちながら彼はどなる。
「あれのどこが人だ?」
「人だよ! 天空に住む人! 竜は怪物じゃない、高度な知性と理性がある──」
キリは悲鳴に近い声でさけんだ。
「なに──!?」
「あれは、わたしたち地上の魔法使いよりはるかに強力な魔力を持った、氷の魔法使いなの!」