先生へ -君に詠む愛の歌-
「・・・那、柚那。
 そろそろ起きないと
 風邪ひくぞ。」


先生の声で目が覚めた。


「ん・・・」


目をこすりながら

起き上がる。

まだ頭がボーっとする。


私は寝起きが悪い。


しっかりするまで

時間がかかる。


「おい?大丈夫か??
 まだ眠そうだな。」


壬生先生は優しく微笑みながら


私を見て言った。


「寝起き悪いんです・・・。」


そういったまま

私の視点はどこを見るともなく

ボーっとしたまま。


「せっかく百人一首の話しを
 してたことだし、1つぐらい
 聞いてもらってもいいかな?」


「あ、はい。」


私は座ったまま

先生の方を向く。


先生は私を見たまま

微笑んでるんだけど

少し哀しそうな感じで

ゆっくりと詠んだ。





「 かくとだに

 

 えやはいぶきの


 
 さしも草



 さしも知らじな



 もゆる思ひを 」



やっぱりとてもイイ声。


私はゆっくり微笑んだ。



「その歌はどういう意・・・」



バーン!


「柚那ちゃんただいま~♪
 さみしかったかぁーい?!」


久世先輩が勢いよく

会議室に入ってきた。


「久世は疲れるという言葉を
 知らないのか?」


ぐったりしたように

先生が久世先輩に言った。


「俺は柚那ちゃん見たら
 疲れなんて吹っ飛ぶの!♪」


そう言って私の横に座る久世先輩。


先生はため息をひとつついて

呆れたように笑っていた。


結局意味、聞きそびれちゃったな・・・。

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