先生へ -君に詠む愛の歌-
「今から先生が話すこと
 聞いて欲しい。」


先生が真剣な顔で私に言った。


「はい。」


「信じる信じないも
 君次第だ。」


「はい。」


私は先生におだやかに

微笑んで答えた。

「かくとだに

 えやはいぶきの

 さしも草
 
 さしも知らじな

 もゆる思ひを


 先生が君に伝えた歌だ。

 意味は

 あなたを好きだと
 言うことさえ
 できないのだから
 伊吹山のさしも草が
 燃えるように
 私の想いの火が
 こんなに激しく燃えているとは
 あなたは知らないでしょう。」


え・・・先生が

私のことが好きってこと・・・?


一気にテレて顔が赤くなった。


先生は話しを続ける。


「君からも返事をもらったよ。

 玉の緒よ 絶なば絶ね

 ながらへば

 しのぶることの

 よわりもぞする

 歌の意味は

 私の命よ
 絶えるなら絶えてほしい 
 このまま生きながらえていたら
 胸の思いをこらえて
 耐えている力が弱まって
 秘めている思いが世間に
 知られてしまうかもしれないから」



私はますます赤面してしまった。


私も・・・


先生を好きだったって


ことだよ・・・ね・・・。






< 141 / 337 >

この作品をシェア

pagetop