先生へ -君に詠む愛の歌-
*****壬生先生視点*****

コーヒーを少し飲んで

落ち着いたころに

テレビの方を向いたまま

話しを始めた。


「なぁ伊波。」


「田元さんのことですか?」


察してるといった様子で

テレビを見たまま答える伊波。


「怖いのか?」


「何がです?」


「今の状態に変化が
 あるということに。」


「僕はね・・・
 とてもモテるんですよ・・。」


「俺もモテる。」


「フフッ・・
 僕なんかを彼氏にしたら
 きっと大変だと
 思うんですよ。
 立場上、誰にでも
 優しく接します。
 必要とあれば
 誰でも抱きしめます。
 そのたびに
 やきもちをやいたり
 悩んだりすれば
 どんどんお互いを
 傷つけていく・・・。
 そうして僕のまわりには
 誰も残らないんです。
 僕に彼女を取られたと
 親友すらも去っていきました。」


伊波の目からは静かに涙が

こぼれていた。


「ずっと一人でいたいと
 思っているのか?」


「田元さんと出会った時、
 藤里さんのことを
 思って泣く彼女は
 とてもキレイだと
 思いました。
 それから、僕の中で
 いつも田元さんの
 顔が浮かぶんです。
 ほぼ一目惚れですね。
 流されて付き合ってた
 彼女がいましたけど
 別れました。
 彼女といるときも
 田元さんの顔が
 浮かんできたから。
 けど、僕があの二人の
 間に入って、彼女達の
 友情を壊すかもしれないと
 考えるようになったんです。
 僕は藤里さんの経過観察を
 しなければならない。
 それを見て田元さんは
 どう動くのかと・・・
 友を失うのはとても
 ツライです・・・。」


「伊波・・・。」

 
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