先生へ -君に詠む愛の歌-
空港について

待ち合わせの場所に

向かった。

佳央たちが

気を使ってくれて

後で行くからって

言ってくれた。


私は貴臣さんの元へ

急いだ。


スーツ姿の

貴臣さんが立っていた。

黒い薄手のコートを

着た貴臣さんは

いつもよりも

かっこよく見えた。


「貴臣さん!」


「柚那!
 早かったなぁ~」



2人の間に流れる

少しの沈黙。


「立ち別れ

 いなばの山の
 
 峰に生ふる

 まつとし聞かば

 今帰り来む」


「貴臣さん・・・」


「いつでも
 連絡して。
 俺もそうするから。」


「うん・・・」


自然と目が潤んでくる・・・

けど泣いちゃダメだ。

貴臣さんを笑顔で

送り出してあげないと・・・


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壬生先生からの歌の意味

君と別れて
私は因幡国へ行くけれど
その因幡国の稲葉山の峰に
はえている「まつ」のように
君が私を待ちこがれていると
聞いたならば
都へ飛んで帰って来よう

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