先生へ -君に詠む愛の歌-

「ただいま~♪」


「おかえりなさい。」


ママが奥から出てきた。


「お邪魔します。」


貴臣さんが頭を下げた。


「柚那がお世話に
 なっております。」


ママも頭を下げた。


「あがって♪」


私はそう言って

貴臣さんをリビングへ

連れて行った。


ママがお茶の用意を

持ってリビングへ

戻ってきた。


「どうぞ。」

ママはニッコリ微笑んで

貴臣さんにコーヒーを

すすめた。


「いただきます。」


さっき緊張するって

言ってたのに

いたって落ち着いた様子の

貴臣さん。


大人の余裕って感じ?かな??


一息ついたところで

貴臣さんが覚悟を

決めたように話し始めた。


「お母さん。
 柚那さんを・・・
 柚那さんを僕に下さい。
 必ず幸せにします。」


そう言って

貴臣さんが頭を下げた。



「・・・・・。」


ママは下を向いたまま

返事をしない。
 

「ママ?」


思わず私がママに声を

かけてしまった。


「先生。」


ようやくママが口を開いた。


「はい。」


貴臣さんはまっすぐママを見る。


ママも貴臣さんをすごく


マジメな顔で見ている。


「・・・返品できませんよ?」


「え?ママ?」


「はい。大丈夫です!」


「私は仕事に打ち込むばかりで
 この子にいつも
 寂しい思いを
 させてきました。
 どうかなるべくそばに
 いてあげてくださいね。」


「はい、約束します。」



「柚那をよろしくお願いします。」


「・・ママ・・・」

ママは涙を流しながら

貴臣さんに頭を下げた。



私も涙を流す。

ママ1人残して行く事

許してね・・・。



「ありがとうございます。
 必ず幸せにします。」


貴臣さんも頭を下げた。 
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