先生へ -君に詠む愛の歌-
私たちは駅まで

歩いていた。


「壬生先生。」


まっすぐ前を向いたまま

歩きながら話しかける。


「ん?どうした?」


私の方を見ている気配。


「ココはかっこよく
 車で送ったりとか
 じゃあないんですか?」


先生はまっすぐ前に

向きなおり、話しだす。



「右から3番目の
 黒い車が俺の車だから。
 これキー。
 先に乗ってろ、寒いから。



 とか?」


私も前を向いたまま

話を続ける。


「わかりました。
 先に乗ってますね。
 あの・・せんせ?
 えっと・・・
 早くきて下さいね?//


 とか?」


少しせつない感じで

胸に手を持ってきて

話してみた。



少しの沈黙。


 
「・・・・ないな。」


「ですよね・・・。」


まっすぐ前を向いたまま

二人でそう言って


それから顔を見合わせて

笑った。


駅までの

ほんの10分ぐらいの距離。


少しの時間だったけど

楽しかったな・・・。






 
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