先生へ -君に詠む愛の歌-
私も窓から月を見ながら

答えた。

「副会長・・・
 久世先輩の事
 好きなんでしょうね。」


「そうだろうな。」


「気持ち、
 届くといいですね。
 久世先輩に。」


「・・・そうだな。
 柚那は、好きなヤツとか
 いるのか?
 あー教師の質問では
 ないか・・・。」


「いませんよ。」


思わず即答していまう・・・。

「そうか・・・。」


「そうです。
 好きな人もいないし
 彼氏もいない。
 気になる人もいないし
 忘れられない人もいません。」


私は月に向かったまま

真剣に答えた。



何言ってるんだろう私・・・。


「そうか・・・。
 じゃあ何が柚那の心を
 とらえてるんだろな。」

先生もまた月を見たまま

静かに答えた。


少しの沈黙。


「・・・・帰りましょうか。」


先生の方にゆっくり向きなおる


「車じゃないけどいい?」

先生も私に向きなおりながら言った。



「運転する先生の横顔に
 見とれてました・・・


 とか?」



「タバコ吸ってもいい?
 窓あけるから少し
 寒くなるけど、ごめんな?


 とか?」



「ないですね。」


「ないな・・・。
 俺タバコ吸わないしな。」


二人でまた笑って

駅に向かった。





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