先生へ -君に詠む愛の歌-
無事採寸も終わって

佳央たちを出口まで送る。

生徒会室を出ようかって時に

思い出したかのように

長谷川さんが振り向いた。

「あ!藤里さん!
 田元さんもなんだけど、
 実はスーツをおしゃれなのに
 したくて、結構費用かかっちゃって
 ネクタイが用意できないの。
 だからお父さんとかのを
 借りてきてもらえないかな??」


お父さん・・・。


私はパパの顔を知らない。

物心ついた時には

ママだけだった。

どうしていないのって

小さいころは聞いたのかも

しれないけれど。

ママはきっと悲しい顔

するような気がするから

私の記憶の中には

パパはいない。

ママから話してくるまで

聞くつもりもない。

私にはママだけで充分。
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