先生へ -君に詠む愛の歌-
*****壬生先生視点*****

生徒会準備室


コンコン。


「どうぞ。」


「失礼します。」


吉岡が準備室に入ってきた。


「おぉ。吉岡!
 卒業おめでとう!」


「ありがとうございます。
 いろいろお世話になりました。」

「いやー俺のセリフだよ。
 ほんと吉岡にはいろいろ
 助けられた、ほんとありがとう。」

「いえ・・・。」


吉岡はゆっくりと窓の外に視線を移す。

俺もつられて窓の外を見る。


「・・・・。
 柚那なら体育館だと思うぞ。」


「・・・。
 僕は負け戦はしないんですよ。」


「・・・そうか。」


「先生はどうなんですか??
 卒業まで待つんですか?」


「・・・俺は・・・。
 俺はまだ戦いの場所すら
 見えてないよ・・・。」


「教師だからですか?」


「柚那がときどき
 遠くを見つめるのを
 知ってるか?」


「えぇ。忘れられない人でも
 いるんですかね。」


「笑ってても
 すぐに落ち着いてしまう。
 柚那の心は何かに
 とらわれてる・・・。」


「・・・僕は身を引いて正解だったな。
 久世には勝てると思ってるけど
 やっぱり先生には勝てそうにない。」


「無駄に年くってないからな(笑)」



吉岡は何も言わずに手を出した。


吉岡と握手をした。


「お元気で。」


「吉岡も。またいつでも遊びにこいよ?」


「そうですね。落ち着いたらまた覗きます。」
 

吉岡はそういって出て行った。


*****壬生先生視点終了*****
< 98 / 337 >

この作品をシェア

pagetop