電子警察官AKI ~3日間の命~

○消去

一通りのデータを消去した。

身近なもので例えると、辞書の半分を引き裂いて棄てたようなものだな。


私は画面の中で待機しているAKIを見つめた。

感情プログラムが、ほぼ消えた。

今のこいつには基本的なプログラムしかない。




「…AKI、ウィルスはデータごと消したが、再びあのハッカーの電子回路に入ればまた侵されるぞ」



AKIは何も答えない。

もう、それほどまでに余裕がなくなってきていたのだ。

人間と同じ位の会話力がなくなりかけている。



「お前は今、"苦しい"か?」


『質問の意味が理解出来ません』




私はデスクの上にあった書類や珈琲を手で凪ぎ払った。

カップの割れる音が実験室に響く。



「真面目に答えろ!! お前は今、"苦しい"のか!?」


『質問の意味が理解出来ません』


「"苦しい"と言え!そうすればお前は助かる!コンピューターにだって限度があるんだ、お前が逮捕出来ないと結果を出せば、それで済むんだぞ!!」



これ以上痛い思いをして、何になるんだ!

あのハッカーには敵わない、私達の負けだ!
完全な敗北、そうだ負け犬だ!


何とでも言え、罵るが良い!

私は出来る限りの事はした、AKIだって同じだ!


苛立つ気持ちで私はAKIの電源を落とした。


「一晩休め、お前には明日こちらから質問させてもらう」
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