桜雪(仮)
「そのファイルに闇怨の刻と黒斑死病について詳しく書かれてる。」
「え!?」
あたしはファイルの中身を見る。
闇怨の刻は弘化三年の九月中旬頃から発生した黒に近い灰色の雲に太陽が隠された。
期間的に言えば約17年あまり。
闇怨の刻によって太陽が隠された一月後、日本全国に黒斑死病が大流行する。
黒斑死病に感染してしまうと一週間熱に苦しみ身体中に黒い斑ができる。
そして結果的には―――
【死】
黒斑死病にかかって生き残った者はいない。
17年間のうちに亡くなった人数は推定で35万人以上。
この闇怨の刻に関わり黒斑死病を流行させた人物は妖でも夢魔や妖魔ではない『影』―――。
「…こんな資料…どこで手に入れたの?」
「…ひいばあちゃんに頂いた。あなたがなるべく動きやすいように。」
「ひいおばあちゃん…。」
あたしはひいおばあちゃんの顔も声も、姿も何も知らない。
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