永遠の約束(深青編-序章-)
「深青――――!」
駅の入り口の前で元気よく手を振りながら深青のところまでかけてくる少女。
元気なこの少女は夏川優奈(なつかわゆうな)。
深青の大親友である。
「おはよう。優奈」
軽く挨拶をする深青の言葉は聞こえていたのか耳を素通りしたのか、挨拶を返すこともなく優奈は深青の肩をガシッと掴む。
「聞いた?」
「はい?………何を?」
優奈の勢いに押されて深青は2歩ほど後ずさる。
「母たちよ! 自分たちだけ車で行くって」
「ああ………。うん。ついさっき」
「ついでなんだから、私たちも一緒に連れて行ってくれてもいいと思わない? ねえ?」
どうやら優奈は母たちだけが車で行くのが気に入らないようだ。
「うん。私も思ったけど………」
「でしょ? 普通、思うよね。ついでなんだから。なのに、家の母ったら何て言ったと思う?」
「さあ………」
「『若いくせに楽ばかり考えるんじゃありません! もう、高校生なんだから親に頼ってばかりじゃなく自分でちゃんとしなさい。』だって! 私がいつ、親に頼ってるって? 今回だけじゃん! 全く―――、腹立つ!」
拳をプルプル震わして毒づく優奈には周りに人がいることも忘れているようだった。