永遠の約束(深青編-序章-)
「湯川先生?」
深青はゆっくりと辺りを見回しながら奥へと進んでいく。
そして、準備室へとつながる扉に手をかけようとした時、不意に扉が開いた。
「おおっ! どうした? さっきから呼んでいたのは君かな?」
わざとらしい驚き方をし、人当たりのよい笑みを浮かべた眼鏡をかけた青年が出てくる。
深青は値踏みするように、青年を見た後でにっこりと作り笑顔を向ける。
「はい。すみません、いきなり。お忙しかったですか?」
「いや。大丈夫だよ。何かな?」
見た限りでは人当たりのよさそうな、生徒たちに人気があるのも納得できるほどの容姿だった。
たぶん、普段も学校ではこんな風に当たり障りのない応対をしているのだろう。
敵を作らずに無駄なく生きているという感じだ。
「あのですね………」
話し始めようとする深青はなぜか、湯川が先ほどから動こうとしない扉の奥が気になった。
「先生………。誰かいらっしゃるんですか?」
「ん? いや………。どうした?」
一瞬、動揺したのを深青は見落とさなかった。
普通の人なら気づきもしない、それほどの一瞬だった。
「さっきから、準備室をかばうように立ってらっしゃるから、誰かいるのかな?って」
深青は茶目っ気たっぷりの笑顔を向け、何も企んでいないような普通の生徒を装う。
「いや、で、話って何かな?」