永遠の約束(深青編-序章-)
「………見間違いじゃないか。俺は、彼女のこと知らないしね」
「そうですか。………ところで、先生。この前の第1化学室の爆発大丈夫でした? 確か、あの教室の担当、先生でしたよね」
この質問は効果的だったのか湯川は表情を固まらす。
「そうだけど。さっきから君は何が言いたいのかな」
「あ、怒ってます? やだ。冗談のつもりだったのに、怒りだすなんてなんだか先生が関係してるみたい」
「馬鹿なことを言うな!」
深青は大げさなほどに驚いてみせる。
「きゃっ! こわーい! もう、湯川先生って優しいって聞いてたのに、期待はずれ。私、帰る!」
はっきり言って、キャラが違う。
これも作戦なのだろうが、いつもの深青とは正反対のキャラだ。
この姿を見られないのは優奈たちは勿体無いことをしただろう。
まあ、見てないからこそできるということもあるが………。
深青は『プンプンしてるぞ』という雰囲気を出しながら生物室を後にしようとしたが。
「君、クラスと名前は?」
湯川は聞いてくる。
その時、深青がにやりと笑ったのをもちろん湯川は知らない。
普通なら、今までの流れ的に怪しんで答えないのだが、深青は答える。
「如月深青。1年3組です。失礼しました」
深青は一礼して、生物室の扉を閉めた。
(かかった!)
深青は視線だけを閉じられた扉へと向け、何事もなかったように廊下を歩きだした。