永遠の約束(深青編-序章-)
「「え?」」
優奈が呟いた名前に大也とみゆきは一斉に振り返る。
そこにはひっそりと佇む一条香織の姿があった。
だが、普通にいるという感じではない。
なにかわからない薄ら寒いものを備えている気配が彼女を覆っていた。
じっと、深青たちを見つめた後、香織はゆっくりと笑みを浮かべながら歩み寄ってくる。
1番後ろにいた深青は3人をかばうように、前に進み出る。
「こんなところで何をしているの?」
香織は笑みを浮かべている。
なのに、心臓を掴まれているような気になるのはどうしてだろうか。
それは、わかっている。
確かに、笑みを浮かべている。
だが、彼女の目は全く笑っていないのだ。
「一条さんこそ。さっき、生物室を後にしたのに、忘れ物?」
優奈たち3人は固まっているのに、深青だけは香織をまっすぐに捉え、対抗する。
それは、確信をつくことで早くも効果が出たようだ。
「………あら! あたし、生物室になんていなかった…………」
途中まで言いかけて、香織は突然、フッと笑い遮る。
「そんな嘘言っても、何もかもお見通しってわけね。………そんなことを言いに来たわけじゃないの。砂川神社(すなかわじんじゃ)。そこで、待ってるわ。全て、話してあげる。気になる全てをね」
「随分、親切ね。まあ、無駄な時間を過ごさなくてもいいのは嬉しいかぎりだけど………」
優奈たちが呆気にとられている間にも深青と香織の間では着々と話は進んでいく。
「じゃあ、来てくれるのね」
「ええ」
「あたしは先に行って待ってるから。それじゃ」
うれしそうな笑みを浮かべ、一条香織は先に歩いていった。