永遠の約束(深青編-序章-)
「あっ、深青、優奈ちゃん!」
校門前で深青の母が小さく手を振っていた。
その隣にはもちろん、優奈の母も一緒にいた。
そして、その母が娘の様子に気がつく。
「どうしたの? 優奈」
深青の後ろを歩いていた優奈だが、その表情はブスッとしていた。
「もう嫌! 電車通学なんて!」
キレ気味に優奈は叫ぶ。
だが、優奈が怒るのも無理はなかった。
ただでさえ、電車通学を嫌がっていた優奈にまるで追い討ちをかけるように男子学生がしつこく言い寄ってきたのだ。
もちろん、それは優奈の性格もしらないからだろうと思うが………。
しつこいようだが、見た目はお嬢様の優奈をほっておくはずがない。
それに、優奈はナンパ野郎が大嫌いなのだ。
声をかけて来た男は深青にも興味があったらしく、優奈が無視をしていたら今度は深青にちょっかいを出し始めた。
そして、ついにキレたらしい。
「あんた、私たちの態度見てわかんないの! うっとうしいんだよ! それにね、なんかあんたの話し方気持ち悪いんだけど………。なよなよしてて。学ランよりスカートのほうが似合ってんじゃないの!」
見た目お嬢様の優奈の口から出た言葉にその男も目を点にして、信じられないというような顔をしていた。
きっと、理想像がさぞかし綺麗に描かれていたのだろう。
かわいそうに、一瞬でその想像は泡と消えてしまった。
消えてしまっただけならまだいいかもしれない。
もしかしたら、逆に悪夢を与えてしまったかもしれない………。