永遠の約束(深青編-序章-)




香織はハアハアと肩で息をしながら、ぎゅっと歯を食いしばる。


どんどんと生気がなくなりつつあるのが自分でもわかる。


だが、止められるはずもなく、ただ攻撃目標である深青を一心に睨みつける。


目の前の深青はどんどんと自分へと近づいてきているのがわかる。


だけど、その距離感も感じなくなりつつある意識の中で、大きな痛みが自分の頬をよぎる。





痛みにより、自分の消えかけていた意識が戻り始める。


すると、目の前には怒りをあらわにする深青の姿があった。


「しっかりしなさい! 自分がどうなるのかもわからないまま力を使っちゃいけない!」


香織は頬にジンジンと傷む感触を感じるようにゆっくりと擦る。


自分で頬を触って初めて感覚がはっきりと蘇る。


「わかってる? ちゃんと聞いて。さっきも言ったけど、あなたには力なんてない。あなたは普通の人なの」


香織は反論する元気もなくただ、座り込んだまま視線を深青に向けるだけだった。


「利用されてるんだよ。湯川はあなたの命をただの道具としか思っていない。気持ちを利用してあなたに全てやらせて、自分は高みの見物をしてるだけ。……今のあなたの力の使い方を見て、ますます痛感した。あいつのあくどさを!」


「…せ……先生は…悪く…ない。全部、あたしがやったこと」


香織は、深青に真実をぶつけられても、自分の命が消えかけていても湯川をかばうことを止めない。




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