永遠の約束(深青編-序章-)
パシッ!
静かな中でその音はとても響いた。
優奈たちは一瞬、何が起こったのかと目を疑う。
引っ叩かれた香織は呆然とした顔で叩かれた頬へとゆっくりと手を動かす。
一方、叩いた深青は動揺もせず、一心に香織に視線をぶつける。
その目には今までよりも強い力がこもっていた。
「ふざけないで! 甘えないでよ。利用されててもいい? 違うでしょ。嫌だから、湯川に呪術をかけようとしたんでしょ。自分のところにいてほしいって」
「あ……あぁあぁぁぁ………あああああああああああああ!」
大声を上げ香織は頭を抱える。
その行動に優奈たちはビクッとする。
香織は矛盾をつかれたことと、自分の中での精神バランスを保っていた理由を深青につかれ押さえられない衝動に襲われる。
目を見開き、大声を上げながら時折体がビクビクと痙攣を起こす香織の姿は優奈たちには異様な姿に見えた。
まるで、何かにとりつかれているようだ。
「大丈夫………。大丈夫よ。人としてそう思うことは間違っていない。ただ、あなたはやり方を間違えてしまっただけ………。湯川を好きな気持ち、その気持ちが大きかったんだよね。自分でも抑えられないぐらいに………」
深青はそっと香織を抱きしめ、背中をぽんぽんとたたく。
「う………うぅぅ、うわ~ん。うぇん。ヒックヒック」
香織は箍が外れたのか、まるで小さな子供が泣くような大声で泣き始めた。
深青は泣き終わるまでずっと香織の背中を擦ってあげていた。