永遠の約束(深青編-序章-)





「深青………。初は返したの?」


「うん………。さっきね」


深青は寂しそうに窓の外を見ている。


優奈も同じように深青の隣で同じ方へと視線を向ける。


「そっか………。深青。いつか、綺羅と会えたらいいね」


優奈は精一杯の笑顔を向ける。


深青は初めは戸惑った表情をしていたものの、優奈の笑顔につられたのか微かに笑みを浮かべた。


「そうだね。会える日が来るといいね」






深青が何を抱えているのかは優奈にはまだわからない。




綺羅の居場所はわかる。


深青が会おうと思えば会えるのに、深青は決して会おうとはしない。





なぜ?




その答えを優奈はまだ聞けなかった。







 「綺羅って子供の頃みたいにまだ、泣き虫だったりするのかな?」


優奈は子供の頃を思い出すと苦笑してしまいながら、言葉を紡いだ。


「泣き虫………って、別に綺羅は泣き虫ではなかったと思うけど。優奈がすごくいじめてたからでしょ!」


先ほどの雰囲気とは一転して深青はぷぅと口を膨らます。


「だって。綺羅ってなんだかいじめたくなるタイプなんだもん」


「優奈………。トラウマになってたらどうするのよ。綺羅、男の子なのに………」


ふざけたことをいいながら、2人はお互いに顔を見合わせ、笑い出す。







夕日に射されながら、さわやかな風が2人を覆う。








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