月夜の訪問者
「ちょと、そんな
姉さんや奥様に見つかったら」
「大丈夫、もうこの邸は出た」

私の言葉に返しつつ、私を持ち上げたまま壁を飛び越える雅

「キャー」

思わず叫び声を上げてしまう。

降りると、おそらくそこは裏道
路肩に馬車が止められていた。

そして、その馬車に押し込まれてしまう

「ちょ、駄目よこんな格好じゃ」

慌てて講義する私

「大丈夫、ちゃんと着替えさせてやる」

雅は、何ともない事の様に無表情だ。

「でも、私が邸に居ないと他の女中達が」
「大丈夫、なにも心配しなくて良い」


大丈夫大丈夫って、本当に大丈夫なの?

これから私、どうなるの?

何処に、連れて行かれる?

初めて出た外を、満喫する余裕などなかった。










しばらく走り、馬車が止まった。
私の考えが頭で纏まらない内に目的地に着いた様だ


頭が真っ白で何が何なのか

「若旦那!」

と、困ったような女の人の顔
止まった店先の看板を見上げる

呉服屋

と、いうことは、この人は店員さん

「何も言うな、頼む」

と、雅は私を馬車から引っ張り出す
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