月夜の訪問者
「姉さんの?聞いてないわ!私も手伝います」

慌ててエプロンを着ようとしたが

「いいわ貴方は此処に居なさい奥様の命令よ」

と、言われてしまい、私はエプロンの紐を結ぶ手を止めた。

皆、慌てて母家の方へ行ってしまい、此処には私が一人残った。

はぁー
一人っていうのも珍しいわね
私は、一人縁側に腰を下ろす

星が綺麗

姉さん、好い人見つかると良いけど

私は、結婚とか出来るのかしら
出来るわけ無いわね、外にだって出して貰え無いんだから



しばらくして



ガサガサ




繁みの揺れる音にハッとする。
うとうとしてしまってた様だ

「誰っ!」

誰か居る。
小動物じゃ無さそうだ

バッと出て来る何か

「おや?ここは厠じゃなかったのか」

と、言う声に顔を見る
背の高い整った顔立ちの男の姿が、月に照らされ浮かび上がる
正装をしてる所から姉さんとこの人だろう

「ここは女中の離れですので、厠なら一度お戻になって、女中の誰かに」

とお辞儀する。

「お前は女中じゃないのか?案内しろ」

と、男
随分と厚かましい奴ね
ボンボンだから仕方ないのかしら
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