月夜の訪問者
欠始めてるのか、これから満月になるのかは、解らない

「俺の事を思い出しているのだろう?」

急に話かけられ、驚いて思わず叫び声を上げそうになる

「おっと真夜中だぞ、近所迷惑だ」

と口を塞がれてしまった

この声

横目で相手を確かめる

この整った顔立ち、横暴な口の聞き方

雅!?

「会えて嬉しいだろ?」

綺麗に微笑む雅
そっと私の口から手を離す

「だっ」

ハッ

思わず大きい声が出てしまい、口を一旦止める

同室者は起きて無いようだ。

「どちら様でしたかしら?不法進入ですよ」

誰があんたなんか!と言いたいのをぐっとこらえ、平然を装う

「その割りには声を落ち着かせて回りに気付かれないようにしてるじゃないか」

クックックッと笑う雅
ムカつく
前から思ってたけど、雅って名前、全然合ってないと思う

「じゃあ、声を上げてやりましょうか?」

ハーっと息を吸い込む私

「素直になれよ、月を見上げて俺を思い出してたくせに
もうお前は俺の虜なはずだ」

と私の肩を掴む雅
何を言ってるのこの人、やっぱり変質者だわ
当直の警備員起きてるかしら
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