月夜の訪問者
「ああ、童話
お伽噺だな
だから読んでやろうと来たのに、お前が入れてくれなんだろう?」

私に、困った表情を向ける雅。

「あら、そうだったの
なら早くそう言いなさいよね」

確かに
廊下に立ってお伽噺を朗読するなんて、恥ずかしいわね。
てか、私も恥ずかしいわ

雅を中に入れる。


「じゃあさっそく…」

と、朗読しはじめる雅

題名はシンデレラ
灰かぶりと言う意味らしい。

時々つっかえる雅だが、英語を日本語に訳詞ながら読むのは大変らしく、時々英語が出てしまっている。

そこまでして私に、伝えたい物語なのだろう

私も真剣に聞く。


どうやら主人公は、父親の再婚した母と、義理の姉にいじめられていたが、ある日、魔法使いに助けられ、王子様と出会い、紆余曲折を経て、ハッピーエンドになったらしい。

確かに、私と似たような境遇だが…

「どうだ?お前とそっくりだろ?」

と、雅
読みきる事が出来て、満足そうだ

「そうね、冒頭の部分だけね」

取り合えず頷く。

「何で冒頭の部分だけなんだ?
全部だろう」

と、雅
全部って、コイツの口癖なのだろうか
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